日本人間性心理学会 第33回大会

  ~ グループの可能性と広がり ~


会 期 : 2014年 10月11日(土)~ 10月13日(月・祝) 会 場:南山大学名古屋キャンパス(名古屋市昭和区山里町18)

ワークショップのご案内


コース1

ボディワーク:人間のもつ三つの叡智
~未来を切り拓く、からだの叡智を磨こう~

グラバア俊子

【内容】

今、私たちが未来を切り拓いていこうとする時、人間という種に備えられている三つの叡智(あたまの叡智・こころの叡智・からだの叡智)が、行くべき道を照らしてくれるように思います。そして、この三つの叡智が調和的に働くためには、からだの叡智からスタートすることが大切だと考えています。
 本ワークショップでは、午前は「私のからだの叡智に出会う」、午後は「からだの叡智を楽しむ」をテーマに実施する予定です。


【講師紹介】

1947年、長野県に生まれる。1973年、立教大学大学院文学研究科で修士号(組織神学)取得。大学院在学中より、立教大学キリスト教教育研究所(JICE)で人間関係トレーニングに携わる。高等教育の新しい試みとして南山短期大学に人間関係科が新設されるにあたり奉職。在職中、米国へ留学。1977年、ボストン大学教育学大学院で修士号(人間性と行動)取得。ハーバード大学ダンスセンター、エサレン研究所などで研修を受ける。現在、南山大学人文学部心理人間学科教授(専攻:人間関係トレーニング、自己成長、ボディワーク)。

 主要著書:『心とからだの安らぎ――五感をみがく現代の健康法』(共著)大蔵省印刷局、1994年/『私という迷宮――セルフクエストのすすめ』日本評論社、1998年/『新・ボディワークのすすめ――からだの叡智が語る私・いのち・未来』創元社、2000年/『五感の力』、創元社、2013年/『すいれんの国』(物語・音楽CD)風の豊与、1995年


【定員・参加条件等】

定員30名。横になったりするので、ゆったりとした服装で参加ください。また、横たわった時の敷物(バスタオルなど)を各自ご用意ください。なお、昼食もワークショップの一部として活用いたしますので、昼食代(1000円程度)をご用意ください。




コース2

「からだ」と「ことば」のレッスン

土谷  薫

【内容】

“「からだ」と「ことば」のレッスン”とは、演出家:竹内敏晴氏が長年行ってきたものである。老若男女あらゆる人たちが竹内さんの前に「からだ」をさらし、自分と向き合う場であった。
 ワークショップでは、まずはゆったりと息を吐き、からだをゆらすことから始めたい。後半は声とことばがどんなふうにからだに触れてくるかを体験し、「自分の声に出会い、人に触れ変え変わる力を持つことば」を目指したい。


【講師紹介】

愛知教育大学大学院教育研究学研究科修士課程修了。南山大学非常勤講師、「からだとことば」担当。言語聴覚士として障害児通園施設にて、主に就学前のこどものコミュニケーション及び発達の支援を行っている。障害児教育を専攻していた大学時代に『ことばがかれるとき』(竹内敏晴著)と出会い、多大な影響を受ける。その後、障害を持った子供たちと関わりながら、定期的に「竹内レッスン」に参加。
竹内氏が演出する芝居(オープンレッスン)にも数年にわたり参加。現在は、まだ発語のない子どもたちとの関わりを「からだ」という視点から考える取り組みを続けている。

著書に『大学における演劇を用いた授業の展開」(共著)『人間関係』南山短期大学人間関係研究センター(2000)など。


【定員・参加条件等】

定員30名。動きやすい服装(体操着等)で参加してください。




コース3

ロジャーズの自己理論にもとづいた体験過程へのアプローチ

松本  剛

【内容】

このワークショップは、これからカウンセリングや心理療法を学んでいこうとする方々を対象とします。ロジャーズは、概念と経験がより一致する状態に近づくことを目指す、という心理療法のひとつの目標を示しています。実際のカウンセリングの場面で、そのような「自分自身との関係」が生まれるということについて、「実際のロールプレイ体験」や「ベーシック・エンカウンター・グループの形式による皆さん自身の経験の分かち合い」を通じて一緒に考えてみたいと思います。ロジャーズは、体験過程を「それまで抑圧されてきた感情が、治療関係の中で十分かつ受容的に気づきの中で体験されると、あらたな洞察が達成されたように、はっきり感じられる理的シフトだけでなく生理的シフトも生じる(Rogers,1980)」と言っています。カウンセリングをこれから実践していこうとお考えの皆さんと、そのような心理療法のありようを一緒に考えられる時間にできればと思います。
Rogers, C.R., 1980,A Way of Being. London: Constable. (畠瀬直子訳,2007『人間尊重の心理学――わが人生と思想を語る』新版、創元社)


【講師紹介】

1958年大阪で生まれ育ちました。高等学校教員を経て、大学に移り学生相談、学校教育相談に関わるようになりました。現在は兵庫教育大学の教職大学院に勤務しています。教育相談に関する実践研究や保護者とのよりよい関係づくり、先生方のためのセルフヘルプ・グループなどの活動も行っています。専門は、人間性心理学の立場でのカウンセリング、ベーシック・エンカウンター・グループのファシリテーターのありように関する研究などです。

著書に『人間中心の教育―パーソン・センタード・アプローチによる教育の再生を目指して―』(コスモス・ライブラリー)/『パーソンセンタード・アプローチの挑戦 現代を生きるエンカウンターの実際』(創元社)/『エンカウンター・グループと国際交流』(ナカニシヤ出版)などがあります。


【定員・参加条件等】

定員20名。これからカウンセリングや心理療法を学んでいこうとする方々対象。




コース4

ベーシック・エンカウンター・グループ疑似体験

下田 節夫

【内容】

ベーシック・エンカウンター・グループ(BEG)では、通常はメンバーが自らのことを語り、それを通して人との出会いを体験したり、自分自身を再発見する、ということが生じます。しかし、必ずしも自分のことを語らなくても、ある程度BEGと似たような体験をすることはできます。今回企画している「BEG疑似体験」は、そのような場を作ろうとする試みです。
 具体的には、参加してくださる方には、事前に拙論「グループの力を信頼して」(伊藤義美編『パーソンセンタード・エンカウンターグループ』ナカニシヤ出版、2005)にある、あるBEGの記録(pp.84-103)を読んできていいただき、ワークショップの場では、そのBEGのメンバーになったつもりで、記録を見ながら、それをシナリオに見立てて演じていただく、ということをします。つまり、そこで一度BEGの疑似体験をするわけです。その後、それを見ていた人も含めて体験を振り返り、もう一度、今度は一部メンバーを入れ替えて、同じような疑似体験をします。そして、それを踏まえて、最後に丁寧にシェアリングを行います。そうしたプロセス全体を通して、ワークショップ参加者の方々に、何がしかBEGに近い体験をしていただければ、と考えています。


【講師紹介】

大学院から臨床心理学を学び、主に学生相談の場で仕事をしてきました。その間、BEGに惹かれ、職場で学生たちと、また職場を離れて一般の方に呼びかけて、ほぼ毎年何回かBEGを行ってきています。
 どうしてBEGに惹かれるのか、なかなかうまく説明できないのですが、そこに何か人間の本性に深く根差したものが実現する可能性を感じている、とでも言えばよいでしょうか。BEGでは、心を開いて人と共に居る、それを通して、自分に、また他者に深く触れる体験ができる、と思っています。

[略歴]東京大学教育学研究科修了、東京大学学生相談所助手を経て、現在神奈川大学学生相談室相談員・人間科学部教授。

[著書]「EGの『構造』について」『神奈川大学心理教育研究論集』6(1988)/「グループ・アプローチにおける言語」『精神療法19- 1』(1993)/「『グループなるもの』について」伊藤他編『パーソンセンタード・アプローチの挑戦』(創元社, 2011)など。


【定員・参加条件等】

定員9名から16名。事前に伊藤義美編『パーソンセンタード・エンカウンターグループ』(ナカニシヤ出版、2005)の実習で使用する部分「BEGの記録」(pp.84-103)を読んでくることが望ましい。




コース5

PCA グループ:新しいグループPCAG の現代的意義・仮説・実際
~21 世紀の人間関係をめざすダイバーシティモデル~

村山 正治

【内容】

Ⅰ.ワークショップの構成
 本ワークショップは、2部に分かれている。①講義:理論編:開発の経緯・基本仮説・PCAGの現代的意義、②実習:PCAGの体験学習・小グループに分かれて実習。
Ⅱ.理論 
 ここ10年ほど、仲間たちとPCAGと呼んでいる新しいグループの実践・プログラム作成・リサーチ・理論化を行ってきている。このグループの特徴的考えを列挙する。
Ⅲ.基本的姿勢
 ①BEGやSEGの形式にとらわれない統合的グループを志向していること。②基本理論は、ロジャースのPCA仮説に基づいている。
Ⅳ PCAGの新しいコンセプト
 これまでの村山のBEG・SEG体験から、新しいグループのコンセプトを提唱している。①はじめに個人ありき、②バラバラで一緒、③初期不安の緩和、④心理的安全感の醸成、⑤所属感の尊重、⑥プログラムの順序性、⑦参加者の相互援助力の重視、⑧参加者がプログラムを企画する「お任せセッション」の重視、⑨生まれてくる新しいグループ像・ダイバーシティモデル(自分らしさの肯定・つながり・個人の尊重)


【講師紹介】

京都大学博士課程修了。教育学博士。臨床心理士。昭和38年京都市教育委員会指導部カウンセリングセンターを経て、昭和42年に九州大学教養部助教授・カウンセラーとして着任。教育学部長など歴任し、名誉教授。九大定年退官後、久留米大学、東亜大学、九州産業大学教授。学校法人九州学園理事など歴任。専門は臨床心理学、人間性心理学、パーソンセンタード・アプローチの理論と実践、スクールカウンセラー事業の発展と評価研究。

最近の著書としては『ロジャースをめぐって』(金剛出版2005)/『新しい事例検討法PCAGIP入門』(創元社2012)/『現場で役立つスクールカウンセリングの実際』(創元社2012)/『PCAグループの理論と実際』(創元社2014.4月刊行予定)
など。


【定員・参加条件等】

定員28名。




コース6

ラボラトリー方式の体験学習

楠本 和彦

【内容】

ラボラトリー方式の体験学習は、学習者が主体的に学ぶことを目指したグループ・アプローチです。セラピー的な側面よりも、心理教育的な側面が強いアプローチです。別の言い方とすると、個人の内界の深い層からのメッセージに焦点を合わせることよりも、「いま・ここ」の人々との関係からの気づき・学びに焦点を合わせることに、より力点がある、ということもできるでしょう。
 本ワークショップでは、実習を用いた構成的なグループワークを行います。ラボラトリー方式の体験学習の代表的なタイプの実習体験と、基本的理論の小講義を実施します。それらを通して、自分や他者への気づきをえるとともに、ラボラトリー方式の体験学習の基本的理論の理解を目指します。
 ラボラトリー方式の体験学習のワークショップは、アメリカのNTLでは多く開催されていますが、日本で実施している機関は多くないため、皆様にとって、なじみの薄いアプローチかもしれません。開催校である南山大学が、学生や社会人の方々と数十年に亘って、育ててきた本アプローチを体験することを通して、皆様とともに学べる場になることを期待しています。


【講師紹介】

南山大学人文学部心理人間学科教授。臨床心理士。個人心理療法とグループ・アプローチに関心をもち、実践・研究を行っています。個人心理療法では、現在、箱庭療法を中心に研究しています。グループ・アプローチでは、ラボラトリー方式の体験学習を中心に、実践・研究を行っています。

著書・論文は、「箱庭制作者の自己実現を促進する諸要因間の相互作用(交流)に関する質的研究」『箱庭療法学研究』25(1) , pp.51-64, 2012 /「箱庭制作者の主観的体験に関する単一事例の質的研究」『箱庭療法学研究』25(3), pp.3-17, 2013 /『人間関係トレーニング』第2版(共著, ナカニシヤ出版, 2005)/「Tグループにおけるトレーナーのファシリテーション、学習観・トレーニング観に関する質的研究」(共著)『人間関係研究』南山大学人間関係研究センター, 11,pp.55-95, 2012他。


【定員・参加条件等】

定員30名。




コース7

AI (Appreciative Inquiry)とは?

松瀬 理保

【内容】

AI(Appreciative Inquiry)とは、組織や人の潜在的な「強み」や「価値」に焦点をあてた問いにより対話(ダイアローグ)を促進し、強みの連携を生み出し、人々の夢や組織のありたい姿を描くことから新たなアクションにつなげる組織開発です。AIの特徴は、人の内在するポジティブな感情(自信、信頼、希望、チャレンジ)や強み、お互いの存在の素晴らしさに焦点をあて、内なる想いを基軸に変化を実現することです。米国オハイオ州 ケース・ウェスタンリザーブ経営大学院のデビッド・クーパーライダー博士(David Cooperrider Ph.D.,)により学会発表され、1998年に組織開発・人材開発における世界最大規模の国際的カンファレンスASTDにおいて最優秀組織開発賞を受賞。2000年以後は、ネパールの農村開発、インドにおける女性の人権獲得支援、シカゴ地域活性化プロジェクト、国連グローバル・コンパクト(2004年6月)など、行政システムの変革や地域活性化、持続可能な社会の実現を目的として導入され実績をあげています。当日は、参加された皆さんにAIのミニ・ワークショップをご体験頂き、それぞれの現場で活かすヒントを一緒に考えたいと思います。


【講師紹介】

大学卒業後、全日本空輸株式会社に入社。その後、外資系航空会社勤務を経て渡米。米国オハイオ州、ケースウエスタンリザーブ経営大学院組織行動コースにおいて、Master Of Positive Organizational Development And Changeを第一期生として修了。ポジティブアプローチによる組織変革AI(Appreciative Inquiry)手法をはじめ、ポジティブ心理学、大脳生理学理論(感情学)、ダイバーシティ経営戦略、EQリーダーシップ開発、など、先端の組織開発を実践学習を通じて修得。その後、米国AIコンサルティングネットワークのcoownerとなり、認定プラクティショナー養成機関として株式会社AIコンサルティング・ジャパンを設立する。大手企業におけるビジョン浸透プロジェクト、環境団体、地域活性化にむけたブランディングなどを手掛ける。

主な著作として『AI――最高の瞬間を引き出す組織開発』『日経文庫コーチング入門』『日経文庫セルフコーチング入門』がある。他JMAM人材教育、月刊人事労務、PHPアシストなどに連載多数。


【定員・参加条件等】

定員30名




コース8

セルフヘルプ・グループとサポート・グループ
~ナラティヴ・グループとして読み解く~

高松  里

【内容】

セルフヘルプ・グループ(当事者のみ)とサポート・グループ(当事者以外が開設)について、長年研究と実践・スーパーバイズなどを行ってきました。これらのグループの本質的な機能とは、「日常に突然現れた“異文化”に言葉をもたらすこと」であると今は考えています。異文化とは、「従来その人が持っている言葉では表現できないもの」を指します。
つまり、病気(慢性病や依存症)や障害を持つ、暴力被害や自然災害に遭う、大切な人を亡くす、ひきこもる、などです。
グループには、これらの異文化を表現するための言葉が蓄積され、また常に新たに作り出されています。
 このような領域は、従来のカウンセリングの考え方である「解決する」「改善する」「成長する」という枠組みでは対応できないと私は考えています。
 本ワークショップでは、ナラティヴ・アプローチを援用しながら、グループの基本的な理念、実際の組み立て方・進め方・終わり方について解説します。また、短時間ですが、模擬グループを実際に作ってみたいと思います。


【講師紹介】

九州大学留学生センター准教授。臨床心理士。
 九州大学には、現在2000人ほどの外国人留学生が学んでおり、私は彼らを対象としているカウンセラーです。また、大学院時代からずっと地域における継続グループについて研究してきました。この2つの実践・研究領域は長い間つながらないままでした。ところが、ナラティヴという考え方に出会うことで、徐々に統合されていき、本ワークショップのような考え方に至っています。

<著書>単著や編著として『セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド』『サポート・グループの実践と展開』『日本に住む外国人留学生Q&A』『パーソンセンタード・アプローチの挑戦』、分担執筆として『人間性心理学ハンドブック』(「社会的マイノリティへのまなざし」)などがあります。


【定員・参加条件等】

定員30名