日本人間性心理学会 第36回大会

ワークショップ1

ワークショップ1


「人間性」という言葉、社会的弱者と共生

神谷 正義


【当日のプログラム】

人間性(心について)》 10:30~12:00、13:00~14:00

「人間性」という言葉の意味するもの

心(人間)は如何にして作られるか

心の構造(意識と無意識(末那識・阿頼耶識))

私はどこにいるの(無我・空)

心の安らぎを求めて(自我を離れて)

共生を考える》 14:30~16:30

現代人の価値観を問う

  • 豊かさ(幸せ)とは
  • 経済至上主義
  • 科学進歩主義
  • 人間(自己)中心主義

共により良く生きるために不可欠なもの

  • 自己を見つめる
  • 人間存在の特徴(他者によって生かされる)
  • 他者優先という生き方(菩薩)
  • 小欲知足の生活

【内容紹介】

開催校である東海学園大学の石田妙美先生から、本学の建学の精神「共生」という観点から何か話題提供して欲しいと依頼を受けた。
仏教を中心とした共生思想、法然仏教思想を研究しており、心理学の門外漢である。
昔に、フロイドやユング、フロム、アラン・ワッソ、メダルト・ボス、ロバート・オーンスタイン、ウイリアム・ジェームス、オットー・ランク、カレン・ホーナイ、マズロー、ウイリス・ハーマン、フリッツ・パールズ等、鈴木大拙、西田幾多郎や河合隼雄氏、秋山さと子氏などの著作を通じて僅かに触れた程度であり、依頼を受けていいのかと自問自答したが、仏教との関わりから何か提示できればと思い引き受けることにした。
その上で、このワークショップでは以下の2 点を取り上げて議論を深めていければと考えている。

① 「人間性」という言葉は多義的で使い方によって、その内容が既に自明のものとして受け止められている。HPでの学会紹介でも、「人間性を理解し、その回復と成長に貢献・・」とある。
人間性はある何かで不調(?)となり、その回復に心理療法を通して回復できるものという。
この場合、既に、本来の人間性は良きものであり、常に成長を遂げるものという前提に立っている。
またゆたかな人間性、教師の人間性が子供に与える影響、人間性が作品に現れるなどの表現にも、様々な意味合いがある。
こうした人間性という言葉を自己(セルフ)実現との関係、人間の行為と仮面(ペルソナ)/影(シャドー)と関わらせて、仏教の立場をも取り入れながら考えてみたい。

② 20世紀は「戦争の世紀」といわれ、その反省に立って、21世紀は「共生の世紀」にと希望的に言われたが、世界各地での紛争、宗教間・民族間などによる紛争は激しさを増している。
経済至上主義という価値観に支配されて、南北問題から南南問題があり、日本では貧富の格差が大きな問題となっているし、環境問題も大きな課題となっている。
こうした問題解決にあたって「共生」という考え方が今求められている。
共生は現実の社会問題の解決に向けて不可欠な考え方であり、同時に未来社会への責任という点でも重要な考え方で、様々な分野で研究対象となっている。
学会HPでの理事長挨拶に「現代社会が直面する問題に対応できる新しい人間性心理学…異文化・多文化間、コミュニティー、福祉、保育、社会的マイノリティーなどの新領域…」とあり、ここではマイノリティー的に扱われる社会的弱者、連鎖する貧困問題を仏教による共生の観点(慈悲・菩薩の実践)から取り上げ話題提供したい。


【講師紹介】

昭和50年3月、佛教大学大学院文学研究科仏教学専攻博士後期課程単位取得満期退学。
その後佛教大学文学部講師をしながら教務課長、学習指導室長、教職センター長、大学設置業務を兼務。平成9年4月、東海学園女子短期大学助教授、教授を経て、平成16年4月東海学園大学人間健康学部スポーツ健康科学部教授、平成26年共生文化研究所教授となる。
その間、人間健康学科学科長、学長補佐、共生文化研究所長を歴任する。
現在、東海学園大学名誉教授。
学会関係では日本印度学仏教学会、日本仏教学会、日本宗教学会、東海印度学仏教学会(常任理事)日本福祉学習支援学会(常任理事)などに所属。
著書としては、『ブッダ・釈尊とは』(大法輪閣:共著)、『基礎教育一般』(佛教大学通信教育部:共著)、『自立学習の手引き~読み・書き・問う~』(日本通信教育協会:共著)など。
『仏教と共生』『法然浄土教の研究』の刊行を予定している。


【定員・参加条件等】

定員 40名
参加条件 特になし